2020年のNHK大河ドラマ「麒麟が来る」で俳優の染谷将太さんが演じる織田信長役の評価が前評判とは打って変わって意外な注目を浴びています。
これまでの織田信長と言えば、数々の名俳優たちが演じる「覇王」のイメージが強かったと思いますが、なぜ童顔丸顔の染谷将太さんが今回信長役に選ばれたのでしょうか?
そこには、“うつけ=サイコパス”と解釈した新脚本と、染谷将太という俳優が持つ可能性に理由があったのです。
染谷将太の織田信長役が意外な人気を博している
今年の大河の信長役って染谷将太なの
全然想定してなかったキャストだ— タクイズメンズソムリエ (@takukube) March 17, 2020
発表前は山田孝之さんが織田信長役をやるのでは、と言われた麒麟が来るのキャスティング。登場初期の頃こそ、染谷将太さんは
なんて揶揄されてしまったりもしましたが…
第9話「信長の失敗」で見せた一瞬の表情で多くの視聴者を虜にしたことで、これまでの「イケメン覇王」的なイメージだった織田信長像を根底からひっくり返す、新しい価値観を吹き込もうとしています。
信長役っていつも同じようでツマランけど、麒麟のノッブは怜悧で快活でふとした拍子に残虐性が垣間見える、と現実にもいそうな感じがいいわ。晩年のイメージを引きずりすぎな大河のテンプレ人物像には違和感あったから
— だんどろ (@EDandoloS513) March 16, 2020
歴代の織田信長は、渡哲也さんや役所広司さんにはじまり、木村拓哉さん、江口洋介さんなど超人気の鬼シブオジサマかイケメンが通ってきた道でした。
大河ドラマ麒麟が来るの織田信長役の染谷将太、前回は似合わないなと思ったけど今回の見たら若い時の虚けぽさを出すのにいい演じ方していると思った。キレたときの演技見るとこれは年を増していくごとに信長らしさを演じていかれるのだな。川口春奈の濃姫ともに期待します。
— ちゃびけん (@chaviken) March 15, 2020
初登場時はボロクソに言われていた染谷将太さんが見直されたのは、若かりし信長の最大の特徴だった「うつけ」の雰囲気を存分に匂わせていたからだと思います。
ちなみに歴代でもっとも人気の高かった織田信長たちはこちら。
名前を載せる必要もない必要もないくらい知名度の高い「かっちょええ信長」が勢揃い。
そんな中でも、染谷将太さんの演技が高く評価されているのにはいくつか理由があるようです。
染谷将太が演じる「うつけ」の演技力が凄い?
第9話の「信長の失敗」では、高橋克典さん演じる父・織田信秀に喜んでもらえると思い、祝言の手土産に“徳川家康の父・松平弘忠の首”を桶に入れて持参。
しかし、軽率な行動だと大逆鱗に触れ、
その消沈する「どこかが狂っている」演技がとても自然に見えたんですよね。この演技について染谷将太さんは、
「やったことは間違いだったかもしれないけれど、息子としては切ない。ただただ褒めてほしかっただけなのに。それでも信長は、父のことが大好きで、尊敬していると思います」
とコメントしていて、革新的な信長のイメージを作るために、脚本への理解度の深さをにじませています。
信長と帰蝶お似合いだよ💑#麒麟がくる#川口春奈 #染谷将太 pic.twitter.com/KhJLZaQdTg
— Ao🌳 (@Ao13829858) March 15, 2020
そうかとおもうと、川口春奈産演じる妻の帰蝶と仲良く身体を寄せ合って火縄銃を打ってみせたり、子分たちと一緒の時はまるで子供のように嬉々としていたりと、「天真爛漫な織田信長」像を存分に演じきっています。
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染谷将太が織田信長役に選ばれた理由はなぜ?
染谷将太さんが出演した最近の話題作と言えば、やはりNHKの朝ドラ「なつぞら」の神地航也役ですね。
スタジオジブリの宮崎駿監督をモデルとした役柄で、天性の才能と独特な雰囲気を演じていました。
でも、過去を遡ると染谷将太さんもいろんな役に挑戦しています。
染谷将太さんは決して「イケメン」の部類ではありませんが、演じられる役の幅がデブ役〜ブッダ役までとにかく幅広い。(3月のライオンは特殊メイク)
カメレオン俳優と言って差し支えない役者ですし、静と動、陰と陽の使い分けがとても魅力的な俳優です。
早くこの顔が見たい、と思うのは私だけでないはず。
2020年大河の「麒麟が来る」は謎に包まれた明智光秀の若かりし頃を描く意欲作としてスタートしましたが、同時に「今までにない織田信長像」を描くというテーマがあったそうです。
なぜ織田信長は「うつけ」と呼ばれたのか?
「麒麟が来る」の織田信長は、母の愛情に飢えつつも満たされない孤独と、偉大なる父へのコンプレックスでどこか歪んでいます。
溢れ出る才能と純粋すぎる性格がごちゃまぜになった末に、善悪の境界線が曖昧な極めてピュアなサイコパス、そんな織田信長を演出したいのかもしれません。
織田信長の顔のイメージと染谷将太が合わない?
イメージしている織田信長と、染谷将太さんの顔が合わなすぎる、という否定的な意見も少なくないようです。
ところで織田信長、と聞いてあなたはどんな顔を思い浮かべますか?
社会科の教科書に載っているあの織田信長だとすると、ちょっとその認識は改めないといけません。
織田信長の生きた時代にはカメラはありません。なので写真は存在しませんが、信長亡き後に極めて写実的に書かれた肖像が残っています。
それがこの顔です。面長色白なところはイメージ通りですが、意外と目がギョロッとしていて怖そうな雰囲気がありますね。
この肖像は織田信長を知る人物の口伝を元に、イタリア人の画家ジョバンニ・ニコラオが描いたものといわれています。
織田信長の顔を伝えるものとしてもう一つ残っているのが、「デスマスク」です。
織田信長の直系の子孫に代々受け継がれているというこの伝説の面。信長が寵愛したポルトガル人の下僕「弥助」が、亡くなった織田信長の顔の石膏を取り、後世に伝えたものと言われています。
輪郭の特徴などは別として、イメージとしてはフィギュアスケートの織田信成さんぽい顔と思ったら結構違うのはなんだか意外ですよね!
ちなみに織田信長の身長は170cmと当時かなり大柄(当時の平均身長は150cm程度)でしたが、染谷将太さんはなんと171cm。かなりドンピシャですね。
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そもそも織田信長のイメージは最近できたもの
歴史の教科書で学んだ比叡山焼き討ちのエピソードだったり、「なかぬなら ころしてしまえ ほととぎす」の句にもあるように、
- 破天荒で革命家
- 残忍、冷酷非道の魔王
- 目が小さくて色白
ざっくりいうとこんなイメージを抱かれている人は多いかもしれません。
染谷信長に、「信長っぽくない」と言う、ステレオタイプな時代劇がお好きな人は、もう何を信じて、何をもってして「ぽくない」と言うのか教えて欲しい。「自分の持っているイメージと違う」ならわかるけれど。それは染谷将太だけじゃなくてね。歴史上の人物をするのは大変だなぁ。
— miyasaurs (@miyasaurs1) March 17, 2020
日本の歴史を大きく変えた数々の功績を残していることは間違いありませんが、現代に伝わる織田信長のイメージは、時代によってころころ変わっていることも事実です。
- 江戸時代=誰も知らないor新井白石によってボロクソに言われる
- 明治時代から戦前=幕府(徳川家)の代わりに勤王家として人気上昇
- 戦後=志半ばで討たれたダークヒーローとして大人気に
織田信長は、徳川幕府の時代は見向きもされませんでした。戦に負けると悪者になってしまう悲しき歴史の定めに従って、評価が低かったのです。
そんな織田信長が戦後になってやたらとファンが増えたのは、
- 1959年の『風雲児』
- 1980年の黒澤明監督の映画『影武者』
- 1983年のコーエーによるゲーム『信長の野望』
などで描かれた「非業の革命家」としてのキャラクターイメージが、現在の織田信長像に大きく影響しているようです。
また、2019年に放送されたNHKの番組「歴史探訪ヒストリア」では、最新の研究の結果では意外な発見がありました。
織田信長は何事も朝廷を中心に考え、将軍足利義昭を奉る真面目な一面が強かった、という新たな人物像を掘り起こしています。
染谷将太さんが織田信長役に抜擢された理由は、
- 親の愛に飢えていた甘えん坊のガキ大将
- 意外と真面目な性格で苦労していたという人物評
- 歪んだ愛情で育てられたサイコパス
という振れ幅の大きい新しい信長像のイメージを描写する目的があったことと、朝ドラに出演経験があって「NHKの貢献度が高い」という理由もありそうです。
にしても、第9話の染谷将太さんの演技(その他の役者の名演技も含めて)神回、という声もあり、今後の展開も大いに期待できそうですね!
染谷将太の織田信長役に対するネットの声
そんな染谷将太産演じる織田信長に対する、SNSの声を集めてみました。。本当に冗談じゃなく高評価の声が多くてびっくりしました。
どこか狂ってる人物を演じるの。染谷将太さん上手いなぁ。#麒麟がくる
— アンフォラ (@amphoralove) March 15, 2020
個人的には3月のライオンの二階堂役も狂っててステキでした。
うまいと言えば、信長役の染谷将太くん。うまい、とにかくうまい、息をのんだ。しかし、あ、この人信長なんだと我に返ると、ちょっとがっかり(^-^; 「妖猫伝」に出ていた記憶が新しく、ちょっと中華風にも見えてしまったところもあるけど、とにかくうまいと思った #麒麟がくる 第9話
— Charlotte🌼いろいろメモ📝 (@charlot01209683) March 17, 2020
他の役のイメージに引っ張られてしまうのも、個性の強い演技をする役者さんならではですね。
信長と信秀の広忠首実検シーンがなかなかのもので
染谷将太演じる信長は従来の強面イメージを離れて表情豊か、信秀に叱責されるのが構成としてもいい
帰蝶に怒鳴りつける場面も、それまでの明るいキャラクターからの一変でこれぞ役者— ゾシア (@neverthless2019) March 17, 2020
感情の高低差、不安定なところを見事に演じきっていたことへの評価は多数見受けられます。
たった1話で染谷将太の役はやっぱり信長だと納得させ、光秀が討つことになる理由も察せさせる演技と脚本。
この第九回「信長の失敗」を神回と言わずなんと言うよ。#麒麟が来る— らいあん (@BellRyantw) March 17, 2020
出ました、神回!既に本能寺の変のシーンが楽しみすぎて仕方ありませんね笑
麒麟がくるの信長めっっっっちゃ!!!怖かった:( ;;°н°):
確かに見た目は信長っぽくないけど染谷将太くんはやっぱ上手いわ😭— にな🍀 (@Nona0207) March 17, 2020
ぽくないけど・・・というギャップが今回のキャスティングのポイントかもしれませんね!
信長サイコパス描写!とか言ってるけどそもそも信長は元からサイコパスよね?
あれはキャスティングした人と染谷将太のルックスと演技を褒め称えるべきところじゃないのかな。見た目冷徹で傲慢な信長が祝いに首級持ってきても視聴者は信長ヤベーやつだなとしか思わないわけだし#麒麟がくる— HED@KYOMU中 (@0sgDEHSK) March 17, 2020
あれが小栗旬さんや山田孝之さんだったら「なんかやりそう」なイメージですよね。
でも「浦島太郎かよww」とか笑われてた染谷将太さんだったからあのシーンが生きた。そう考えると、今後もギャップ萌え(?)を狙ったシーンが多数楽しませてくれるような気がします!